かもめ

きみはカモメを見たことがあるかい?

「カモメってなあに?」まんまるでうるうるした純粋な瞳が私の瞳孔を射抜いた。心が透き通るような気持ちになってなんだか嬉しくなった。目に前にはきれいな海と淡い水色の空がひろがっている。

「カモメってね鳥のことなんだよ。」

「へえ、鳥さんかあ、かなちゃんもみたことあるかなあ。」とわくわくした口調で私の目を覗き込んでくる。

「どうだろうねえ、かもめってねこんな鳥さんなんだよ」とスマホの画面を見せてあげる。本当は口で説明をしてあげたほうがいいのだろうけれども恥ずかしいことに、本当はどんな鳥なのかよくわかっていない。かなちゃんは自分のことをかなちゃんという。これは彼女が生まれて4年たってもなかなか改善されない。何回も自分のことは私っていうんだよ、と教えても結局はかなちゃんに戻ってしまう。そんなかなちゃんはスマホの画面を見て「へえ。」といっただけでそっぽを向いてしまった。たいして興味を抱かなかったことにあっけにとられていたら「かなちゃんおしっこ!!」とまるで救いを求めるかのような目をしながら言う。おしっこ。こまったな、ここら辺にトイレはないんだ。もたもたしていると、耐えかねた4歳のかなちゃんは漏らしかねない。おしっこが付いたままの洋服で車に乗らせるわけにはいかない。さてどうしたらよいものか。辟易としてきた。あたりを見回したら古民家がぽつんと一軒見えた。あそこでトイレをかしてもらおう。