お味噌汁をいただくわ。

おばさまは45歳のメイドにそういいつけて、鳥ガラのように皮膚が骨に張り付いた足を踏ん張りながら立ち上がり、壁に体重をかけながら洗面所に向かった。

おばさまは32歳で極度のダイエットのせいでお身体を壊されてしまわれた。それでも彼女は自分が太っているという自覚があり一日にお味噌汁しか召し上がらない。

しかし、そんなおばさまにもう忠告する者は誰もいない。

以前、私はおばさまに「もう十分すぎるくらいにお痩せになっておりますわ。それにスタイルも良くてお美しい限りでございます。どうしてこれ以上お痩せになる必要がございましょうか。」といったら、かっと目を見開かれ「おさとさん、あなたまでそのようなことをおっしゃるのね。わたくしは全く痩せてなどいませんわ。ほら、見てごらんなさい。」とご自分の左右の頬っぺたを、ぎゅうっとつまんで見せた。

「確かにそれは脂肪ではございますが、ダイエットをされてまで落とすには及びません。」

そういうとおばさまは私に、このわからずやが、といわんばかりにふてぶてしい態度をおとりになり、部屋を出てしまわれた。それがたった半年前のことである。

 

あの時多少荒波を立ててでも粘り強く説得すべきだった。

 

おばさまは今ではすっかり近所では誰も知らない人はいないほどに有名になられてしまった。道を歩けばじろじろと見られる始末である。通り過ぎたところでひそひそと話し始めろところから、おそらくおばさまのことを話しているのだろう。

おばさまそれに気が付いていらっしゃるのだが、この前このようなことをおっしゃるものだから呆気に取られてしまいました。

「なんだかダイエットを始めてからは、通りすがるお人皆がわたくしの方を振り返るのよ。それがわたくしが美人だからに違いありませんわ。なんだか痩せるっていいわね。最近お出かけするのが楽しくて仕方ございませんわ。」

自意識過剰極まりなく、誤解しておられる。